令和3年9月30日から10月17日にかけて開催した「国際陶磁器フェスティバル美濃’21」
において、「第1回セラミックバレー展」が開催されました。
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていた中、フェスティバルの中核催事である
「第12回国際陶磁器展美濃」と共に、地域の強い思いを受けて本催事は開催されました。
本催事の目的は、「なぜ我々はこの地域をセラミックバレーと名付けたのか」、
「セラミックバレーとは何なのか」を、観る人に分かりやすい展示の中で感じていただく
ことでした。
会場に入ると、最初にタイムトンネルをくぐり抜けて500万年前まで時代を遡ること
になります。それは、セラミックバレーの物語の始まりがそこにあることを示唆して
います。そして、その物語はこの地域に対する3つの感謝の思いのもとに紡がれて
いきます。
最初は「土への感謝」の思い。そこには、この地で良質の粘土が採取されるもとに
なった500万年前の東海湖の物語がベースにあります。
東海湖の湖底に長い年月をかけて堆積した土が、奇跡の土として焼きものの原料と
なった過程に想いを馳せます。また、会場では実際にいろいろな種類の土の実物を
展示し、その土の持つ特性についても知ることができました。
2つ目は「火への感謝」の思い。そこでは、焼きものを焼成する窯と焼成技術の
革新の物語を観ることができました。
地域の先人達は、奇跡の土から器をつくりました。そして大陸からの技術の流入や
人との交流のもと、焼成する窯の改良や技術の研鑽を重ねてきました。
3つ目は「人への感謝」の思いです。この地域では、これまで大きく変化する時代
の流れの中にあっても、たくさんのつくり手による挑戦のもと、焼きものに関する
高度な技術が伝承されてきました。
今回の展示では、伝統の技に挑み、それを極めた人として、古田織部から現代の
人間国宝までを紹介しました。
この地域に息づく創造の系譜は、こうした多くのつくり手たちにとって指標となる
人々の存在によって、連綿と紡がれています。
以上の3つの感謝の思いのもと紡がれる物語は、この地域 セラミックバレーの
アイデンティティーとなり、現在の美濃焼の産業や文化に色濃く息づいています。
そうした背景を観た後に、現在の美濃焼についての紹介展示が続きます。
現在この地域でどれだけの焼きものが生産されているのか。どれだけ多くの人が
焼きものに関りを持っているのか。製造の現場ではどのような道具が使われている
のかなど、実際に焼成前の器をのせるモロ板を担いでみることができる体験展示も
あり、現在の美濃焼業界について理解を深めることができました。
セラミックバレー美濃は、今を生きている私たちだけのものではありません。
膨大な長い年月を経て堆積した奇跡の土を生かし、弛まない焼成技術の研鑽を重ね、
産業を興し、この地域の社会と文化を育んできた先人たちのものであり、これから
生まれてくるこの地域の子どもたちのものでもあります。私たちはこの地域への感謝の
思いのもと、この地域を守り、育み、次世代につなげていくために、今後のセラミック
バレーの活動を推進してまいります。
どうかこれからのこの地域 セラミックバレーにご期待ください。
「第1回セラミックバレー展」の会場の様子については、「国際陶磁器フェスティバル
美濃公式WEBサイト」の「セラミックバレーと世界の陶磁器展オンライン展示会」で
ご覧いただけます。
「セラミックバレーのと世界の陶磁器展」オンライン展示会
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